~漂着松のその後~
先週の土曜日、一年ぶりにヤイリギターに行ってきました。なぜ一年ぶりなのか?それは、昨年神代欅のギターを作っていただいたとき、次のギターの構想に入ろうと思っていたのですが、すでに何台分か予約待ち状態で、1年以上は順番待ちになりそうだったからです。ギターを制作していただく間隔としては、楽しみがあって、このくらいがちょうどいいのかもしれません。
さて、今回訪問した目的は二つ。一つは新聞に掲載されていた、東日本大震災の津波で倒され流され打ち上げられた漂着松でギターを作るという試みを、私もこの目で見たいと思ったのと、もう一つは長年の夢だったギターの制作を依頼するためです。いつもは土曜日となると、見学者やギター仲間が集まっていて、健司さんの周辺はいつも賑やかだったのですが、今回は午前中にお伺いしたということもあってか誰もいませんでした。健司さんは真剣にギターと格闘していたため申し訳なかったのですが、声をかけさせていただきました。
漂着松はすでにギター用に何枚かの板になっており、乾燥中でした。
この松の板から何台分のギターを作ることができるのかわからなかったのですが、もし余分があったら、その板で私にも一台作っていただけるということでしたので、指板に象嵌する絵をお渡ししてきました。ギターとして生まれ変わってきたら大事にしたいです。
オリジナルギターの制作依頼については、すでに一年前からテーマは決めていました。「Silent Japan」です。実家に飾ってある亡くなった母親の書「静和」からとりました。ロバート・ホワイティングの著書に「和をもって日本となす」という本があるのですが、世界に誇れる技術で日本を代表するギターを作りたいという思いを込めています。材質はキルトメイプル(英語)。ヤイリギターが西暦2000年を記念して制作したミレニアムギターが何台かあったのですが、その中に、オールキルトメイプルのギターがありました。その木目の素晴らしさに感動し、いつかはキルトメイプルのギターでオリジナルギターを作りたいと思っていました。それから待つこと11年目。やっと制作に取り掛かることができます。
デザインはこれからですが、私がここ1年ほど温めてきたイメージがありますので、それを小池健司さんや加藤穂高さんと試行錯誤しながら固めていきたいと考えているのです。少しだけこっそり教えると、「正倉院の琵琶」・桃山時代の美濃の焼き物で、織部によく描かれているのですが、水辺に私のように控えめにさりげなく息づいている「沢瀉(おもだか)」・可憐な「秋草」などを考えています。
生まれ育った日本をイメージして渾身の一本。私の最後のわがままなのだ。許せ!