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2010年12月28日火曜日

密室での会話

~公認会計士が税務業務を行うのに、税法の受験は必要か~


 静岡県会の会員である武下先生が黄綬褒章を受賞され、私もその記念パーティにご招待いただきましたので、12月23日の天皇誕生日、会場となっている富士市のホテルまで出かけました。新幹線にしようか車にしようか当日の朝まで迷っていたのですが、久々の長距離ドライブを楽しむことにしたのです。休日で雲ひとつない天気だったため、道路の込み具合が心配でしたが車は順調に進みます。途中で道路の左手に雪をかぶった富士山がくっきりと現れました。今まで何度も新幹線で名古屋~東京間を往復し、そのたびに富士山を眺めてきましたが、これほど鮮明な富士山を見たのは初めてのことでしたので、思わず見とれてしまいました。いったん隠れた富士山が今度は道路の右手に現れ(なぜだろう?)、そして富士インターに到着する頃には、どぉ~んと真正面に現れたではありませんか。その迫力には圧倒されましたね。

 
 「人生は祭りと闘い」の武下先生も、最初は緊張気味でしたが、乾杯があって食事タイムになり、アルコールが入ってからはリラックスムード。私も覚悟はしていたのですが、周りの皆さんが飲んでいるときにウーロン茶で我慢するのは初めての体験です。ビールやワインに合いそうな料理でしたので、飲めなくてつらい思いをしましたが、家へ帰ってゆっくり飲むからいいのだと自分に言い聞かせて、その場は楽しく過ごすことができました。


 テーブルでは、松岡東海会会長と前川元東海会会長が一緒でしたので、帰りは私が車で名古屋までお送りすることにしました。偶然にも現・前・元が密室で3時間語り合うことになったのです。私は車で高速を走るときは、時速200キロで追い越し車線をぶっ飛ばすのですが(ウソですけど・・・)、この時ばかりは走行車線を制限速度内で慎重に運転することにしたのです。


 密室での会談で話題になったことの一つは、税理士法の改正です。現在の法律では、公認会計士は税理士登録すれば税務業務を行うことができるのですが、改正法案が通ると公認会計士が税務を行うためには、税理士試験の税法科目を1科目合格しなければならないことになります。ここが問題なのですね。

 
 私の場合、公認会計士登録後、昭和60年に税理士登録だけは行い、その後5年ほど前に廃業しました。この間、税務業務といえるものはほとんど行わなかったとはいえ、勉強だけはよくやったと思います。当時の3次試験に合格し、公認会計士登録をしたのですが、監査業務についてはその頃はもう達成感があり、幅広い知識を身につけようと新しい分野に手を広げ始めたのです。そのひとつが税法でした。もともと3次試験の試験科目の中では法人税法が得意中の得意でしたが、所得税や相続税の知識も身につけました。財産評価もそうです。公認会計士は勉強が好きなのだ。


 実務はやらなかったとはいえ、税理士登録をすると毎年確定申告の時期に無料相談の割り当てがあります。税理士登録をしていた間は毎年必ず出席し、その都度確定申告書を12~13人分くらい書いてあげていたのですが、それで何かわからないことがあって困ってしまったということはほとんどありませんでした。若い女性が、税金を支払っていないにもかかわらず、領収書をたくさん持ってきて、「これで税金を還付してください」といわれた時は、はっきり言って困りましたが、優しくご説明申し上げておひきとりいただきました。


 試験と実務とは大違いだということは大部分の実務家の皆さんがご存じだと思いますし、この道30年の私も、いま公認会計士試験を受験しろといわれたら、合格できるかどうか分かりません。ベテラン税理士さんも同様だと思います。公認会計士は会計のプロですから、税理士登録をして税務で食べていこうと腹をくくったからには、そのための勉強(実務)を必死になってやるでしょう。お客様にご迷惑をおかけするようなことにはならないと思うのですがいかがでしょうか。

2010年12月23日木曜日

取りやすいところから取ろうというのか

~ピンの人がトーの人たちの増税を決議しようとしている~


今から27~28年ほど前、私がまだ会計士補だった頃、出版社に勤めた高校の同級生の友人から「法律関係の雑学本を出版したのだが、それの税金版を書いてくれないか」という依頼がありました。自信はなかったのですが、文学部出身で当時からアメーバ人間だった私は、面白そうだからといってつい引き受けてしまったのです。法人に迷惑をかけてはいけないと思ったため、ペンネームを使って書きました。その本が昭和59年1月30日に「公人の友社」から出版された税金関係の雑学本です。ネットで検索したら出てきたので驚いたのですが、恥ずかしいので買わないでください。 

それはともかく、その本の中にはこんな質問が書いてあります。


 [質問]クロヨンとは何のことですか。

答A黒四ダムのことです

答B所得税の課税の不公平を言います。

答C漫画の主人公の名前です。


 [正解]




 [質問]サラリーマンには、何故必要経費が認められないのですか。

答Aそんなことはありません。その気になって申告さえすれば必要経費が認められ ます。

答Bサラリーマンに必要経費がかかることはほとんどあり得ないからです。

答C事実上困難であるため、給与所得控除という方法を採用しています。


 [正解]出版当時はC。現在は、ほとんど利用されてはいませんがAも正解


クロヨンという言葉は最近あまり聞かれなくなりましたが、もちろんこの質問の正解は、黒四ダムでも漫画の主人公の名前でもなく、所得税の捕捉率の不公平さを表した言葉です。本来税金の申告は個人個人が自主的に行えばいいと思うのですが、日本のサラリーマンの給与所得は、会社つまり所得の発生源でまるまる100%把握されてしまい、有無を言わさず源泉徴収という形で仮徴収されてしまいます。そして最終的には年末調整で1年間の税金の精算が行われるわけですね。税金を徴収する立場からすると、こんなに確実な方法はありません。中にはアルバイトをしているサラリーマンもいるかもしれませんので、捕捉率は9割~10割でしょうか。


ところが自営業者のように、自主的に確定申告するケースはそうはいきません。税金はなるべく払いたくないもの、中には経費を水増ししたり、事業と家計の区別があいまいになったりとか、あるいは売上を除外したりするケースもあるかもしれません。心情的にはよ~くわかります。そのために税務署の調査が行われては脱税を指摘されることになるのです。所得の捕捉率は5割~6割といったところでしょうか。


農家のケースは所得の捕捉がさらに難しいといわれています。帳面など付けているのだろうか?私も将来農業をやるかもしれませんので、あまり大きな声では言いたくないのですが、3割~4割でしょう。許せ!


このように、所得の捕捉率を大まかに把握すると、サラリーマン9割、自営業者6割、農家4割となるため、それをクロヨンといっていたのです。


でも、その上をいく職業があるといわれています。それが政治家です。私は政治家にはなったことがないのでよくわからないのですが、選挙で土下座してでもなりたい人がいるくらいですから、いろいろおいしいことがあるのでしょうね。結論1割。そこで、政治家も加えた所得の捕捉率を表した言葉がトーゴーサンピンです。この言葉もあまり聞かれなくなりましたが、昔の人は面白いことをいいますね。


話は変わって給与所得控除です。サラリーマンには必要経費が認められないから、自営業者に比べて不公平だとよく言われますが、それは大きな誤りです。サラリーマンにはもともと給与所得控除といって、給与金額に応じて一定割合の控除が認められています。該当項目を個別に決めると手続きが面倒になるため、給与金額に応じて一律的に一定額が決められているのです。10年くらい前でしょうか、給与所得控除に代えて、サラリーマンにも必要経費を認めようという制度ができましたが、必要経費が非常に限定的であるため、この制度を利用している人は日本全国でも100人に満たないのではないでしょうか。制度としては全く機能していません。


結局大部分のサラリーマンが給与所得控除を利用することになるのですが、この給与所得控除に上限を設け、なおかつ役員クラスは半額にしようというのが、今回管政権が法人税率の引き下げの見返りとして打ち出している増税策の一部なのです。何しろ所得の捕捉率が100%ですので、こんなに確実に見込まれる増税は他にはないでしょう。全国のおとなしくて従順なサイレント・マジョリティの反応は如何に。



2010年12月20日月曜日

東海会ニュース250号記念なのだ

~8年と4カ月の歳月が過ぎ去ったのでした~


先日、雑誌「企業会計」-総特集 企業会計激動の時代を読む-を読もうと図書室へ入って、何気なく図書の棚を眺めていたところ、すぐそばに「東海会ニュース」が置いてあるではありませんか。そして同じく何気なく表紙を眺めていたら、なんということでしょう、そこには250号と記載されているではありませんか。ということで、年明けには「東海会ニュース250号記念特集号」が東海会の会員の皆様方のお手元に届くはずです。特集号には、「前東海会会長として」「元広報委員長として」の原稿2本を事務局にすでに提出してありますので、会員の皆様方には年明けにそちらを読んでいただくとして、ブログには広報委員長時代の原稿をほんの少しだけ掲載いたします。


私が広報委員長を担当していた時に、「東海会ニュース第200号記念特集号」を発刊したのですが、東海会ニュースは隔月発行ですので年6冊発行されます。したがって200号から250号までの間に「8年と4カ月」が過ぎたことになります。私も当時は45歳でした。若かった。2番アイアンを使っていた。骨董にも興味はなかった。髭も黒かった。お酒も一升飲めた。ああ!時が経つのは早いものですね。この間自分はいったい何をしてきたのだろう?と振り返ってみたのですが、そうだ、協会の仕事をしていたのでした。この後、順調にいって300号が出るまでにはさらに8年と4カ月かかりますので、監査法人に勤務し続けたとしたら、ちょうど定年退職を迎えるころになっているはずです。その頃にはこの業界はどうなっているのだろうか?IFRSはもう導入されているのだろうか?なかなか予測するのは難しいですね。


では、150号から200号までの8年4カ月はどうだったのでしょう。広報委員長を担当する前は、広報委員と愛知県会の幹事や副会長をダブルで3期ほど勤めていましたので、この期間のほとんどが該当することになります。この間、行事が行われたといっては東海会ニュースに原稿を書きまくっていたのですが、多い時には一冊に3本ほど投稿させていただいたこともありました。会員の先生にも、失礼ながら私が勝手にニックネームをつけさせていただきまして、例えば毛利先生には「ジョン・モーリー(ゴルフのジョン・デイリーからパクリました)」、伊藤先生には「トムカ・イトー(ゴルフのトム・カイトから)」のお名前で、東海会ニュースに登場していただきました。懐かしいなぁ。この頃、東海会ニュースとは別に、「公認会計士は今日も行くのだ!」というエッセイを自己満足で書いていたのですが、今思えばこのころから原稿を書くのが好きだったのですね。すでに物置部屋化している私の自宅の部屋の机の引き出しに眠っているこの原稿を、いつか引っ張りだす機会があればいいなと思っています。


時代の流れかもしれませんが、最近は情報源が新聞や本・雑誌等の紙媒体によるものからネット経由で入手する方法に急速に移りつつあります。私のようなアナログ人間は、ケータイも電話しか利用しませんし、「iPhone」「iPad」なるものも持っていません。こんなことで今の世の中、乗り切っていけるのであるかと思うこともありますが、それでいいのだ。紙だっていいではないか。昔は電話もFaxもコピーもなかったのである。古いものにこそ価値が見出される時代がきっとやってくるに違いありません。紙の東海会ニュースよ、ウェブに負けるな!どうか300号をこの目で見届けさせてください。


2010年12月17日金曜日

最近なんか変だぞ

~気が緩んでいるのだろうか~


 先週の土曜日、ワイシャツの在庫が少なくなってきたので、クリーニングに出すついでにすでに出してある洗濯物を持ち帰ろうとしました。時間がないので2週間に一回くらいしかクリーニング店へは行かないのですが、おかげで15点も溜まっていたのです。いつもの店員さんと違っていたので、新入社員かなと思っていたのですが、洗濯物を私の眼の前にドサッと置いて「ありがとうございました」ときたではありませんか。そのまま袋の中に詰め込もうとするため、念のために「点数が多いので一応数えていただけませんか」と話しかけ、1点ずつ数えていただいたのですが、13点しかありませんでした。そうしたら後ろのほうからごそごそとズボンが2本出てくるではありませんか。いったいどうなっているのだ。


 私は食事関係については、基本的に一日一麺を原則としています。一人のときは、できるだけ栄養が少ないようにと、昼食に麺類を食べることが多いのですが、うどんやそばはもちろん、細くて長いものであれば、パスタであろうがマカロニであろうが春雨・トコロテン・寒天等何でもこいなのです。先日、近くのうどん屋さんで、キツネそばの大盛り(100円アップ)を食べたのですが、レジでお金を支払おうとしたところ、普通盛りの値段を言われてしまいました。100円儲けたと思ってその場を立ち去ってもよかったのですが、親の教育が染みついているのと、根っからの監査人である私にそういうことはできません。「あの~、大盛りなんですけど」と申し述べて、600円支払ってお店を出ました。いったいどうなっているのだ。


 今月に入ってから2度ほど、もう支払っているはずだと思われる請求を言われました。1度目のほうは、先月支払ったばかりで記憶にもあったため、「支払ったはずですけど」と言いきってその場を立ち去ったのですが、もう一方はもう半年も前の話でしたので、そんなはずはないとは思ったものの、仕方がないのでその場で支払いを済ませました。2件とも自宅に帰ってから、箱に保管してある証憑関係の山の中を一枚ずつ探したのですが、いずれのケースも領収書が出てきたのですね。根っからの監査人である私は、この会社の経理はいったいどうなっているのだと思ってしまいます。


 最近日本経済も、景気の悪い状況が長期間継続し、学校を卒業してもなかなか思ったように就職できないし、また就職できたと思っても、自分の希望とは異なる職場についている人が多いのかもしれません。モチベーションが下がっているのでしょうか。経済だけではなく政治も行き詰っていますし、残念ながらどこを振り向いても、あまりいい話は聞こえてきませんね。


 日曜日に、吹上で行われた骨董市に出かけてきたのですが、キッコーマンの古~い栓抜きを見つけてしまい、うれしくて思わず購入してしまいました。200円。骨董市では、自分に見る目がないからなのでしょう、茶碗や酒器等の焼き物はどうしても新しいものに見えてしまい、なかなか勇気を出して購入することができませんでした。本以外のものを買ったのは初めてです。ついに本格的骨董市デビューなのだ。200円でこんなにうれしい気持ちになることができるのですね。他にも、戦争のときに兵士が着ていた軍服や、持っていたと思われる水筒・鞄が売っていたので購入しようと思ったのですが、結局辞めました。特に鞄は、いろいろ詰め込んで持ち歩いたらかっこいいなと思ったのですが、調書用紙が入りそうもなかったので。

2010年12月13日月曜日

IFRSの千ページ本を読み始めた

~時刻表を読むのとは違うけれど・・・~


 試した人はいないでしょうが、例えば時刻表を最初の1ページ目から順番に読み始めていったとすると、どんなに暇で根気強い人でも途中で断念してしまうでしょう。私の場合、読書に関しては、専門書の場合は途中から読みはじめたり、あるいは項目別に読むという読み方は決してしません。いつも最初の1ページ目から読み始めることにしています。専門書以外の一般書ももちろん最初のページから読むわけですが、集中力があった以前は一度読み始めるとその本に集中し、読み終わるまでは他の本には手を出しませんでした。読み終わった本は手帳に本のタイトルとその年の何冊目かを記載し、年間100~130冊を目標にしていたものでした。しかし40代頃からは地下鉄の中とか帰宅後とか寝る前等、複数の本を同時並行的に読む癖がつき、今も3冊読みかけの本があります。そのかわり、人生残された時間はだんだん少なくなってくるので、時刻表に限らず読んでみて面白くない本は最後まで読むことはせず、途中で読むのを放棄してしまいます。

 
 IFRSの本に関しては、業務上必要な本ですので、理解しづらい日本語という翻訳問題の壁はあるものの、時刻表並みとはいかないまでも根気強く読まなければなりません。千ページ本が出ていたのでその本から読み始めようとも考えたのですが、とりあえず今年は経営財務旬間経理情報、それに会計監査ジャーナル企業会計季刊会計基準等に記載されているIFRS関係の記事を読みあさり、200数十ページの本を3冊ほど読了しました。このあたりでいよいよ千ページ本にとりかかろうと考え、IFRS本に関しては定評があり、多くの会計士が読んでいる昨年出版された大手監査法人編著の本にチャレンジしようと思ったのですが、なんと今年の秋ごろにさらに千ページ本の3部作が出版されているではありませんか。辞書代わりに購入しようかとも思ったのですが、そうこうしているうちに12月にさらに千ページ本が出版されていました。こちらは即購入。さっそく読み始めることにします。昨年の年末年始は焼き物の本を11冊読めたので、そのペースでいけば千ページくらいどうってことないのだ。

 
 日本全国には会社数が250万社ほどあるといわれていますが、そのうち数年後IFRSが適用されるのは、上場会社のとりあえずは連結財務諸表だけですので、3,600社ほどの上場会社とその連結子会社だけです。総会社数の1%に達するのでしょうか?このあたりのことを真剣に考えたりすると、千ページ本を前にして気持ちが萎えてしまうので、あまり考えないことにするのです。時刻表を読むのと同じ結果にならないよう、久しぶりに気合十分な私です。ワシだってやるときはやるケンネ。