カテゴリリンク

2014年6月6日金曜日

インレイ

~アコースティックギターを彩る魅惑の世界~


 ギターはシンプルなほうがいいという人もいます。私も、ギターの材質となる「木」そのものに魅力を感じている一人ですので、いい材質を使ったシンプルなギターにも魅力を感じます。


 一方、ギターに彩りを添えるのは、「インレイ」です。若いころ、ハカランダで作ったマーティンD45「ツリー・オブ・ライフ」にあこがれて、お店を訪ねて見に行ったことがありました。その当時、確か中古で200万円くらいだったでしょうか。とても手が出ませんでした。今ではそれよりもはるかに高価になっているはずです。ギタリストの石川鷹彦さんや、さだまさしさんが保有しています。


 ヤイリギターさんに、はじめてオリジナルキターを作っていただいたときには、インレイをどうしようかと思ったのですが、やはりこだわったのは、「ツリー・オブ・ライフ」でした。ヤイリギターさんの工場を見学したときに見た「ライオンキング」のインレイがそれに近かった(より派手でしたが)ので、同じものを入れていただきました。


 その後、ギターを作っていただくときには、インレイもオリジナルなものにしたいと考えるようになり、自分で時間をかけてイメージを膨らませていきました。そしてそのイメージに、見事に応えてくれてのが、三重のラリーロビンソンこと加藤穂高さんでした。


 その加藤さんのインレイや仕事の様子が、アコースティックギターマガジンのインレイ特集号(6月号)に掲載されると聞いて、さっそく雑誌を購入して読んでみました。


 掲載されているインレイは、どれも素晴らしいものでした。中には、ギターというよりも美術品の領域と思われるものもありました。ただただ驚くばかりです。


 インレイを一通り全部みて、気が付いたことが一つあったのですが、それはインレイが彫られている場所です。大部分が指板やヘッドあるいはピックガードです。たまにギターの裏側に大胆なインレイが彫ってあるものもありましたが、事例としては少ないようです。


 でも、もっとも難易度が高いのは、なんといってもギターのトップ材、サウンドホールのあたりに彫るインレイです。そもそもこんなうすい板に、どうやって貝で象嵌するというのでしょう。想像を絶するほど緻密で神経を使う作業になるはずです。それを加藤穂高さんはやってのけるのです。


 雑誌には、ヤイリギターの「昇り竜」が、その例として掲載されていました。そして、我が「By-Ken#48」も。


 貝にもいろんな色があるようで、それを使い分けて描かれたインレイはとても美しく、魅惑的な世界を演出していました。


 さて、加藤さんに現在製作をお願いしている「祈り」ですが、いよいよ動き始めました。着物姿で祈りをささげている女性を、サウンドホールの周りに貝で象嵌していただくのです。着物のことはよくわからないので、実際に絵を描いた女性の方からアドバイスを受けることにしました。


 私も、匠の技に応えるために、可能なかぎり協力したいです。