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2014年6月8日日曜日

購入しなかった高麗白磁のぐい飲み

~あれは本物だったのだろうか?~

 骨董雑誌「目の眼」の20113月号別冊号は「酒・器スタイル」という特集号です。この雑誌の中で、著名な酒器コレクターである等々力孝志さんが、対談の中でこのような内容の事を話しています。


 「自分には、心の奥に秘めている本当にほしい酒器のリストができている」と。そして、「頭の中にある究極の酒器として、南宋官窯の盃、宋鈞窯、高麗白磁の盃などあまり市場にない、まるで宝石のような酒器を思い浮かべます。」と述べています。

 
 骨董を初めてまだ一年もたたない頃、当時お付き合いしていた骨董店の店主に、その高麗白磁のぐい飲みを進められたことがありました。それより数か月ほど前に、高麗白磁の徳利を見せていただいたのですが、その時の店主の説明では、


「高麗時代は青磁がほとんどであるが、一時的に白磁にチャレンジしていた時期がある。ただ、白磁と言えるほどうまく白い色が出なかったため、このような不完全な白磁になっている」

というものでした。言われてみれば表面が荒いようで、李朝の白磁とは明らかに異なります。私の頭の中に、高麗白磁というのはこういうものなのだということがインプットされました。
 

さて、その高麗白磁のぐい飲みですが、高麗白磁だと言われた徳利とは明らかに異なっています。肌がきれいなのです。表面にはアヒルが泳いでいる絵が細い線で描かれていました。これは大変珍し物で、大名品だと言います。その店主の骨董の先生であるIさんも、ぜひほしいと言っているのだそうです。でも、ほしいならなぜ購入しないのだろうか。


 そのうち店主は、これは大変珍しいものだから、本物であることを証明したいと言い始めました。東洋陶磁美術館の女性の学芸員に知り合いがいるから、その方に見せに行って話を聞いてくるとまで言います。
 

結局自分の勉強不足と諸般の事情で、その「高麗白磁のぐい飲み」は購入しませんでした。あれは本物だったのだろうか?今となってはわかりません。だれかが購入したのだろうか?