~日本の伝統を引き継げないか~
エスペランサ村から車で20分くらい行ったところの山麓にお寺があります。今回はそのお寺を訪ねました。
今の住職のお父さんは2年前に亡くなられたのですが、とても本がお好きな方で、本の重みで床が抜けてしまったという伝説(ではなく、本当の話)のある方です。
現在はその方の息子さんが後を継いでいますが、そのお母様が言われるには、お寺というのは住職とその家族が預かっているだけなので、後継ぎがいないと、そのお寺から退去しなければならないのだそうです。初めて知りました。幸いそのお寺では、三男の方が後を継ぎ立派に住職を勤めていらっしゃるので、しばらく安泰です。
いろいろお話を伺っていた部屋には、代々の住職の方々の写真が掲げられていました。先代の住職は床が抜けるほど本が好きだった方ですが、そのお父様である先々代の住職の方は絶世の美男子だったそうです(掲げられている写真を見てもよくわかります)。そして、「琵琶の名手」だったと。おお、琵琶ですか。
「琵琶」と聞いて、私の興味は一気に深まります。シンガーソングライターの小椋佳さんが、数年前から日本の伝統的な楽器である琵琶に深くのめり込んでいるという話は、何かで読んで知っていましたが、その琵琶の名手だといいます。私も昨年、正倉院の琵琶をイメージしたギターを、ヤイリギターさんに作っていただいたばかりです。
さっそく私は尋ねます。
「それでは、琵琶が今でもこのお寺にあるのですか?」
思わぬ答えが変えてきました。
「ほら、あなたのすぐ後ろにあるのが琵琶ですよ」
「えっ?」
私の後ろは床の間になっており、掛け軸が飾られていたのですが、床の間の片隅には大きさが1メートルくらいあるでしょうか、古い布に包まれた、いかにも琵琶をくるんでいそうな形をしたものが立て掛けてありました。
「この布の中に琵琶が入っていると・・・」
いったん興味を持ってしまうと、私も止まりません。
「開けてもいいですか」
古い琵琶だと思われましたので、傷をつけないように慎重に布を脱がせていきます。中から立派な琵琶が出てきました。
弦が緩んでいたし(締め方はなんとなく想像できましたが)、調音の仕方がわからなかったため、実際にかき鳴らすことはできませんでした。でも、こんな感じかなと琵琶をもって構えてみると、なんとなくしっくり感がありました。基本的なことを覚えれば、弾けそうな気がします。
「たまにここへきて弾いてもいいですか」と私。そうしたらお母様は、
「この琵琶を弾く人は、もうこのお寺には誰もいないので・・・」
と、私にその琵琶を譲ってくれるというではありせんか。
突然の申し出に驚いてしまったのですが、もともと琵琶には興味があったし、三味線をやってみようかとも思っていたところです。新しい楽器に挑戦するなら、私にとってはこの琵琶のほうが魅力的です。でも、さすがに今日の今日、お寺の琵琶を持ち帰るというのは、ちょっと抵抗があります。きちんとその琵琶を古布でくるんで、いったんお返しました。
あの琵琶、ヤイリギターさんで、再生できないだろうか