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2010年5月29日土曜日

「人が見たら蛙になれ」と青山二郎は言った

~財務諸表の真贋を見極められるか~


「人が見たら蛙になれ」とは青山二郎さんの言葉です。別冊太陽の「青山二郎の眼」を読んでいたら、そう書かれていました。青山二郎さんが、自分が集めた骨董に対して語った言葉のようですが、はじめは何の事を言っているのかよくわからなかったのです。でも、よくよく読んでみると「いいものは自分が見つけるから、他人が見たら蛙の格好をしていなさいね」と作品(この場合骨董)に語りかけていたということのようです。何という自信にあふれた言葉でしょう。よほど自分の見る目に自信がなければ、このような言葉は出てこないでしょうね。本物を見分けるには厳しい目が要求されるのだ!ということを言われたような気がします。


最近、人間社会でよく見かけるのが、上の人が自分を見たら急に宝石になろうとする人です。目がくもっている人は、それをまともに受け入れてしまい、すぐ「あいつはいいやつだ」と騙されてしまいます。人を見る目のない人や、自分のお気に入りの人だけを差別してかわいがる人には困ったものですが、これが経営者となると最悪です。自分にとって都合の悪いことをいう人は排除し、おとなしく黙っている人たちで周りを固めてしまったら、たしかにやりやすいかもしれませんが、自分が裸の王様になるだけなのに。それに気づかない人がトップに立つと、その組織は崩壊してしまうでしょう。

また、鞄になろうとする人もいます。「上の人を見たら鞄になれ」を信条とする人のなんと多いことか。鞄になるどころか、人間宅急便となって、鞄を持ち運んでしまう人もいるようです。こういう人を「カバン持ち」といいます。あなたの周りにもよくいますね。


世の経営者の中には「会計士が見たら美人になれ」とばかりに、お化粧直しをした財務諸表を作成する人もいるようです。それを見た会計士も、常に職業的懐疑心をもって監査にあたらないと、財務諸表の真贋を見分けることはできないでしょう。骨董の収集家であれば、だれでも贋物をつかんでしまうことはよくあることで、それによって勉強していけば本物を見分ける眼が養われてくるのですが、会計士の監査となると、そんなのんびりしたことは言っていられません。贋物の財務諸表を見分けるだけの「眼」が常に必要です。どこから見ても蛙にしか見えないような監査調書を作成することのないよう、緊張感を持って監査を実施しなければなりません。


27日に行われた地域会会長会議の帰り道、新幹線の中で村田喜代子さんの「人が見たら蛙に化れ」という本を読んでいたのですが、なかなか面白い本でした。会議の今回のアジェンダの一つが「地域会の活動評価について」でしたが、もう3年近く毎回同じテーマが出てくるので、この時ばかりは私も蛙になっていましたが。