私の好きな作家の中に、名古屋出身の清水義範がいます。20年ほど前に「蕎麦ときしめん」(この作品は本当に面白かった)や「国語入試問題必勝法」などを読み始めたころからのファンで、その後の作品もほとんど読んでいるのですが、彼の作品の一部は、ある既存の作品を模倣することによって面白さを引き出すもので、いわゆる「パスティーシュ」といわれています。
今回は、宮沢賢治の作品で「雨ニモ負ケズ」を、公認会計士バージョンにパスティーシュしてみました。
(雨ニモ負ケズ)
雨にも負けず
風にも負けず
会社のお願いにも負けぬ
丈夫な精神力を持ち
妥協はせず
決して逆上せず
いつも静かに監査小六法を読んでいる
一日に調書10枚と
100通のメールをこなし
あらゆることを
利害関係者を勘定に入れ
よく審査して分かり
そしてまとめる
名古屋の駅前のミッドランドスクエアの陰の
古びたビルの小さな部屋にいて
東に粉飾したいという会社あれば
行ってつまらん見栄は張るなといい
西に上場したい会社あれば
行って任せなさいといい
南に死にそうな会社あれば
行って再生しましょうといい
北にコンプライアンス違反があれば
いいかげんにせいといい
カネボウ問題のときは涙を流し
ライブドア事件のときはおろおろ歩き
みんなにもっと仕事をしろといわれ
ほめられもせず
苦にもされず
そういう公認会計士に
わたしは
なりたい