陶芸家「松元洋一」さんの個展が、今日から12日まで、丸栄で開催されます。私にも招待状が届きましたが、今日から数日間高山方面で過ごすため、間に合わないかもしれません。
昔から焼き物が好きだったのですが、焼き物好きの感性を呼び覚ましたのは、私にとっては間違いなくこの人「松元洋一」さんです。伏見にある「ギャラリー栗本」には当時よく遊びに行っていたのですが、たまたま彼の個展が開催されていました。
全体的に、なんとなく縄文時代の焼き物を思い出させるような雰囲気があり、いわゆる土の匂いがしました。堅く焼き締まった土に、自然釉がゆったりと流れています。ギャラリーの奥のほうに、出来上がりのいいものが置いてあるようで、のぞいてみました。いい感じの徳利があります。「鶴首」と書かれていました。なるほど、確かに鶴の首のようです(下の写真左側)。ほしいなぁと思って値段を見たら、びっくり。
とても買えないとわかっていながらも、店内を何度もぐるぐる回っているうちに、どうしてもその「鶴首」が気になりはじめます。そのうち目が離せなくなり、とうとう「鶴首」の目の前に座り込んで眺めるようになってしまいました。
魔界に誘われるようにして、その日のうちにとうとう購入を決意。この徳利に合う盃があったので、セットで購入したら、盃を一個余分に付けてくれました。店を出た後で、やっと冷静さを取り戻すことができたのですが、気が付いたら体中に汗をかいていました。焼き物に魅せられた時の、この感覚はいったい何なのだろうか、不思議な体験でした。
その日の夜、布団の中に入ったのですが、同じ場所にあった湯飲み茶わんが頭の中を駆け回って眠れなくなってしまいました。ガシッと焼きしめられ、しかも灰がたっぷりかかって自然釉の景色がたまりません。もう売れてしまったのではないかと心配になり、翌日すぐに「ギャラリー栗本」に電話します。幸いまだ残っていたため、お金がないのに大慌てで購入すると言っていました。
本格的に焼き物にのめり始めた瞬間でした。
※写真撮影 野村淳さん