~徳利はお酒を入れるためのもの~
思い込みが激しい方ですので、いったんほしいと思ってしまったら、お金がなくてもとりあえずは保管していただいて、あとは手が届くところまでお金がたまるのを待ってから、いそいそと購入しに行きます。この待っている間がたまらなくいいのです。やっとの思いで手に入れたものというのは、愛着がわくというものです。
骨董店でお金を支払って手に入れ、いそいそと自宅へ帰ります。家の中で中身を取り出して、なでなでしながら眺めているのですが、私の悪い癖でその後すぐにしまいこんでしまうのです。日常使う徳利はそれほど多くは必要ないため、いったんしまいこんでしまうと次に取り出す機会がなかなか訪れてきません。私の連れ合いはそのあたりのところが気に入らないのですね。せっかく買ったのに使わずにしまいこんでしまうのかと。
私は徳利の形をしている物は、当然お酒を入れるものであるというふうに、何の疑いもない確固たる信念を持っているわけですが、そうでない人にとっては、あの形をしたものは、花瓶にちょうどいいではないかということになってしまうようです。ところが私としては、いったん花瓶で使ってしまうと、なかなかそれにお酒を注いで飲もうという気にはなれません。ですから、それは何が何でも阻止しなければなりません。
ただ、徳利でも酒を飲むのにふさわしい種類と、花を生けた方がお似合いのものがあるような気がするのも確かです。徳利として使いたくなるようなものは、形にもよりますが、どっしりした形の粉引・三島・刷毛目・唐津あたりでしょうか。それに対して花入れにお似合いなのは、あまり例を挙げたくないのですが…備前なども一輪挿しにぴったりくるのもあります。また、瑠璃釉や白磁なんかもいいかもしれませんね。床の間にでも飾っておくと絵になります。それは認めます。
それはわかっているのですが、酒飲みとしては、くれぐれも徳利が花入れに使われることのないよう、常日頃から用心しなければならないのです。