私が骨董雑誌「小さな蕾」のバックナンバー30年分を、古本の目録で発見したのは、2012年の10月ごろでした。30年分といっても、正確には1980年1月号から2012年6月号までで、全部で390冊になります。これを3万円で購入しました。一冊77円です。
時間があるときに、最初の号からコツコツ読んでいったのですが、ついに先日完読しました。1年3か月かかりましたね。「継続は力なり」です。
一通り読み終えて思ったのは、古美術あるいは骨董品というのは、どうやら同じものが、いろんなコレクターのところを、時間をかけてくるくる回っているらしいということです。つまり、皆さん一時的に預かっているということになります。
天下の名品や、それに類するものは、それを所有していた大コレクターと言われる人たちが、美術館に寄贈してしまいます。例えば、安宅産業関係は「東洋陶磁美術館」ですし、ほかにも「根津美術館」や多くの名だたる美術館の所蔵品も、個人から寄贈のあったものです。東海地区においても、岡谷コレクションは徳川美術館に寄贈されましたし、木村コレクションは、瀬戸にある陶磁美術館に寄贈されています。
いったん美術館の所蔵品となってしまうと、よほどのことがないかぎり、二度と個人のところには戻ってきません。多くの人に見てもらうという意味では、美術館に寄贈するというのも、それはそれでいいのかもしれませんが、個人のコレクターにとっては流通しなければ所有できないし、ましてや使うことなどできません。茶碗などは、使ってこそ伝世品としての輝きが増してくるのだと思うのですが、いかがでしょうか。
その結果として、大名品はだんだん流通する品が少なくなってきますが、それ以外の、頑張ればサラリーマンでも購入することのできる骨董品に関しては、時間をかけてコレクターのところをいろいろ回っているようです。
骨董品は同じものはありませんし、増えることもありません。32年と半年分の「小さな蕾」の中の古美術は、私にはとても手に入れらないものがほとんどでしたが、どこかで見かけたなと思うものもいくつかあり、なかなか刺激的な390冊でした。