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2013年11月10日日曜日

「Silent Japan」制作記 その2

~最大の難関「正倉院の琵琶」~

 「正倉院の琵琶」は、約1300年前に製作されたものです。当時の工具・技術で制作されたものが、今でも現存するということ自体、奇跡的なことだと思います。

 その、正倉院の琵琶」に描かれている絵柄を、現代のギターに蘇らせようという、私の壮大なる思いは、言うのは簡単ですが、制作する方は、大変な覚悟と「志の高さ」そして、気の遠くなるようなご苦労があったことだと思います。インレイが完成した後にいただいた、「加藤穂高さん」からのメールに、このインレイにかけた彼の遥かなる想い(おそらく言葉では表せないような想い)が私にずっしりと伝わってきました。


「正倉院の琵琶」は、インレイ加工が施されている素材の部分は、堅くて安定した「ローズウッド」です。ところが、今回私がお願いしたのは、きわめて柔らかい部類の木材である「スプルース」で、しかもギターのトップボードですので、非常に薄いです。そこを掘って、貝を埋めていきます。
 

「加藤穂高さん」からいただいた、「制作途中の琵琶の模様のインレイ画像」です。貝を埋めて、磨き上げただけの状態の画像だそうです。この段階では、まだ細かな線の彫刻は入っていません。
 
 

続いて、サウンドホールを作る前の写真です。ホールの丸い線に沿って、ぎりぎりにインレイが描かれているのがわかります。すごい技術です。

加藤穂高さんによると、ギターのサウンドホールに美しく収まるサイズで製図したため、このインレイが、本物の正倉院の琵琶の70%の縮小サイズになってしまい、制作の難易度をかなり上げたそうです。このことが、細部の処理(おそらく花の中に極細に描かれている線でしょうか)などで違いとなって表れて、相当難しかったようでした。まさに、三重の生んだラリーロビンソン、奇跡のインレイ職人の本領発揮といったところでしょうか。神業としかいいようがありません



  
そして、私がネックの太さの調整のために、「ヤイリギター」さんへ行った際に撮影した画像です。まだ塗装前ですが、中に細かな線の彫刻が入っています。拡大します。

 





 



そして、最終的にこのように仕上がりました。
 
 
 
 
塗装が乗ると、「琵琶の花の模様の内側の金色のラインの彫刻」が、ひときわ鮮やかですね。