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2013年11月7日木曜日

「Silent Japan」製作記その1

~制作開始…2年前~

 自宅にヤイリギターから大きめの封筒が届いていました。ドキドキしながら封を切って中身を取り出してみると、制作を依頼していたギターの図案でした。いよいよこれからSilent Japanの制作に取り掛かることになるのです。自分で制作についてイメージし始めてから、1年がたっていました

 今回のギターは「日本」がテーマです。何かにつけてグローバル化が叫ばれていますが、やはり我が愛すべき国は日本。日本をテーマにしたギターを作りたいと、3年ほど前から思い描いていたのです。そして震災以来、日本に対する思いはますます強くなるばかりでした。


 今回制作するギターももちろん、ヤイリギターの筆頭クラフトマンであるゴッドハンド「小池健司さん」と、日本を代表する奇跡のインレイ職人「加藤穂高さん」、そしてプロデューサーが私の3人のコラボレーションです。といっても私の出番は、制作開始前のテーマを決めることとギターの材質選び、それにテーマにふさわしいイメージを描くことですが。


 今回のテーマは「静和」です。「和をもって日本となす」と、ロバート・ホワイティングがそういっています。英語で表すとSilent Japanとなるわけですね。
 
 すでに健司さんとは材質選びを終えていたのですが、問題はギターに描く、インレイのイラストです。ヘッドと指板は何とかなるにしても、私がロゼットの周り(サウンドホールの周り)に描いていただきたいと依頼していたのは、「正倉院の琵琶」をイメージしたものだったのです。
 
 琵琶本体は、分厚い木でできていますので、螺鈿細工で象嵌することは可能だと思うのですが、私が依頼しているのは、うすっぺらなギターの表面(トップ材)を掘って、そこに貝を埋め込む作業が必要になるわけです。こんなことが、人間業で本当に可能なのだろうかという思いだったのですが、「加藤穂高さん」なら、もしかしてやってしまうのではないかと期待していましたし、小池健司さん」「彼ならできると思うよ」と信頼していましたので、私も思い切って頼んでいたのです。
 

 さて、送られてきた原寸大の図案を見たのですが、圧巻でした。



 指板には、桃山時代に、ヤイリギターのある美濃地方で、名もない陶工によって描かれた「沢瀉(おもだか)」という水生植物を描いていただくようお願いしました。「沢瀉」の図柄集は、画集としてまとめられているのですが、加藤穂高さんは、これらの絵柄を集めていろいろ検討していたようでした。

  そして問題のサウンドホールの周りです。



 私のイメージした絵がこれも原寸大で描かれているではありませんか。

 もし、薄い板に螺鈿細工を掘るのが無理であれば、絵が描かれているはずはないのですが、私の目の前にある図案には、確かに描かれています。つまり象嵌が可能だということなのです。信じられないけれどそうなのです。

 

 この後の私の役目は、ネックの調整だけですが、制作開始から2年の間に、「小池健司さん「加藤穂高さん」からいただいた画像をもとに、お二人の渾身の一作「Silent Japan」の制作記を、6回に分けてまとめてみようと思います。