昔から講演をやるのが好きだったため、何かテーマが決まると、資料を基に自分の言葉でわかりやすいように噛み砕き、「オレ流」原稿を作成します。内部統制監査の導入時にも、真っ先に様々な情報をあちこちからかき集め、オリジナルの原稿「越麻呂スペシャル」を作成しました。それをもとに、クライアントや監査役協会などで講演を行っていたのです。
その際に、内部統制の構成要素の一つ「情報の伝達」を説明するときの例として取り上げたのが、企業に不祥事が発生した際の、会社の対応についてです。
内部統制監査が始まる前は、企業不祥事が発覚して、社長がテレビなどでお詫びするときには、かならずといっていいほど「部下がやったことで私は何も知らなかった」「悪いのは私ではなくて部下だ」と責任逃れをしていたわけですけれども、内部統制監査が始まってからは、それが通用しない状況になりました。
経営者には、内部統制を構築する責任がありますし、判例でもそれを認めているわけですが、そういう仕組を作ってこなかった場合は、それだけで責任問題になるわけですね。
仮にやむをえない理由があったとしても、知らなかったということは、内部統制の重要な要素である「情報の伝達」がうまくいっていないことになり、会社の仕組みが機能していないことになります。
したがって、結果的に「知らなかった」と、うかつに発言してしまうと、経営者として免責されるどころか、むしろ問題を大きくしてしまうことになりかねないのです。不正が起きた場合でも、速やかに情報を収集して、しかるべき対応をとる体制を築くことが求められていると思います。
最近世間を騒がせている不祥事がいろいろありますが、金額の大小は別として、やはり情報が伝わっていないのだと思います。私は、「悪い話こそ真っ先に伝えるべきである」と、名古屋第一監査法人時代の先輩に教えられて以来、それをずっと守ってきました。でも、ちょうちん持ちが多い組織では、悪い話はなかなか上に行くほど伝わりにくくなるようです。
なぜかむなしいです。