~ジネンジョに魅せられた男~
引っ越しというのは面倒ですね。我が人生、数えてみたらもう11回も引っ越ししてます。今住んでいるところが16年目で最も長いのですが、年齢を重ねるにしたがって、だんだん引っ越しが面倒になってきます。
これが例えば、勤め先の組織の都合で転勤しなければならなくなった場合には、なんとなくあきらめがつくのでしょうが、自分の意志で引っ越しとなると、具体化するまでにはかなりのエネルギーが必要です。
私の場合、東京から、それまで一度も足を踏み入れたことがなかった名古屋に引っ越すときには、相当なエネルギー・決意が必要でした。まだ若かったからできたことだと思うのですが、今考えるとよく決断したものだと思います。結果的には正解でしたが。
引っ越しするだけでも大変なのに、これが「移住」となるともっと大変でしょう。エスペランサ村から車で約30分くらいの所でレストランを経営しているYさんは、横浜から移住してきた方ですが、4月にお会いしていろいろお話を伺ったところでは、住む場所を探したりでやはり具体的に行動するまでには数年かかったといいます。なかなか大変です。
さて、Gさんからキウイ畑やラズベリーをみせていただいて、いろいろ説明を受けていたのですが、その隣にも立派な畑がありました。美しく整えられた畝の間で、一人の男性が黙々と農作業に没頭しています。
その方をGさんが紹介してくれました。Kさんです。
名刺をいただいたので拝見すると、横文字の会社の代表取締役と記載されています。本社がある場所は、東京の調布市でした。おお!懐かしの調布です。
私にとって調布は大変思い入れのある街です。監査法人中央会計事務所の東京事務所勤務時代に、担当していたクライアントが調布にあったため、よく行きました。「日活」や、当時の名前で「第百生命」です。
日活は、本社が六本木にあったのですが、撮影所は調布にありました。もちろん仕事で行ったのですが、昼休みには撮影所を見学させていただきました。石原裕次郎が「喜びの酒 松竹梅」のCMを撮っていましたし、渡哲也にサインをねだって断られ、代わりにというか、峰竜太のサインをいただいたりしました・・・関係ないですけど。
Kさんが代表取締役を務める会社は、やはり映像関係の会社のようです。今の時代はネットやメールでやり取りができるため、会社は若い人たちに任せて指示だけして、ご自分はこの町に「移住」してきたのだそうです。
Kさんが育てているのは「ジネンジョ」でした。5年ほど前に農業をやりたくなったらしく、思い切って山口県の、農業関係では第一人者として有名な方の門をたたいたそうです。そしてそこの農業研修センターで、1年間「ジネンジョ」の作り方を実際に教わってきたといいます。う~ん!私とは意気込みが違うようです。
Kさんは現在62歳。5年前に里山で農業をやりたくなったと言っていましたので、ちょうど今の私の年齢の時です。この年齢というのは、ある面微妙な年齢なのですね。定年まで勤めてしまっては、その後の人生もう新しいことをやる気力がなくなってしまうでしょう。
監査法人勤務で定年を迎えた公認会計士ならば、定年後は非常勤の社外監査役を何社かやって月に2~3日出勤し、あとはゴルフでも月に数回やって、夜には酒でも飲んでテレビでも見て時間をつぶし、そのまま年を重ねて死んでしまうのです。
我が人生それでいいはずないでしょう・・・と、ここで力んでもしょうがないですね。Kさんからは、「焦らずにゆっくりやりなさい」とアドバイスをいただきました。
それにしても、YさんといいKさんといい、この町には移住者が多いようです。話によると、この町は移住者を受け入れているというか、むしろ積極的に呼び入れているようですね。
私が一時週末移住先として考えていた長野県の安曇野や飯田は、おそらく黙っていても関東や中部からの移住者がやってくるのでしょう。この辺りは非常に環境がいいし、中央高速で通るたびに美しい風景にため息が出てしまうのですが、残念ながらご縁がありませんでした。
移住者を受け入れる体制ができている町というのはいいですね。エスペランサ村からも近いので、この人たちとぜひネットワークを作っていきたいものです。