~監査法人は統合の歴史である~
経済界では、企業同士の統合が破談になるケースが最近目につきます。たとえば「キリンHD(ホールディングス)」と「サントリーHD」の統合中止や、「高島屋」と「H2O(阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合によって誕生した持株会社)」の決裂は記憶に新しいし、我が故郷の秋田でも県内にあるスーパー4社の経営統合が撤回されたというニュースが流れていました。お互いにメリットを見出して統合を進めていったのでしょうが、その過程で考え方や戦略の相違、社風の違い等いろいろ異なる思いが出てきたのでしょう。そのあたりは経営のトッププロ同士が交渉に当たっているのですから、感性を研ぎ澄まし、敏感に微妙なにおいを感じとるのでしょうね。
監査法人は、特に大手はそうですが、統合の歴史そのものです。両手の指が足りなくなるのではと思えるくらい統合を繰り返して、多くの事務所がひとつの事務所として成り立っています。公認会計士は会計・監査のプロであり、一人ひとりがプロ意識を持って行動してしまうため、従来はサラリーマン意識というものはほとんどありませんでした。統合によって組織がだんだん大きくなってくると、サムライ会計士の多い事務所全体をまとめていくというのは、なかなか大変なことだと思います。
一般の事業会にとっても、会社が大きくなるということは望ましいことにちがいありません。しかし、そこで働くことになる個人個人にとっては、一概そうとは言えないことなのであると、最近いろいろ考えさせられるのです。統合によって、それまではできなかったような、いろんな業務をできる機会に恵まれ、自分をさらに飛躍させることのできる人もいるでしょうし、異なる環境の中で目立たなくなってしまう人もいると思うのですね。
経済界で統合を目指す経営のプロの方は、統合比率のことや統合後の戦略等の他にも、そこで働く個々人の幸せまで考えて行動しているのかどうか、大変興味があります。個人の幸せまで考えて行動できる経営者は、人間的にも大きな人なのでしょう。
企業がグローバル化し、生き残っていくためには規模の利益を追求する必要があるとは思うのですが、そこで働く個人の幸せも考えて行動できる人こそ、必要とされるのだと、最近特に思うのです。