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2014年12月29日月曜日

負の連鎖

~農家の淘汰が始まるのでは~

 農家の平均所得は、一般サラリーマンの平均水準より低いと言わざるを得ません。農家は、食料はある程度自給できるので、いざという時には強いのですが、現金収入が少ないため、兼業する人が多いようです。したがって、都会人のような派手な暮らしはできません。


 一方、会社勤めのサラリーマンは、普通に働いていれば、生活には困らないどころか、少々贅沢な暮しができるだけの現金収入を得ることはできるでしょう。しかし、万一の場合は日々の食糧にも困るかもしれません。ふだんは気がつかないけれど、ある面脆弱な基盤の上に成り立っているともいえます。それに、組織の中では厭なことがあっても、給料のためにはじっと我慢しなければならないことも多いでしょう。


 サラリーマン生活を辞めて、就農を目指す若者が増えているとはいいますが、現実は悩ましいところです。


 その、現金収入の少ない農家ですが、昨年我が国の総理大臣は、「農業所得を今後10年間で3倍にする」と宣言しました。


 また一方では、この地方の新聞には「農協が農家から買い取る今年の新米価格が、60キロ当たり8,500円に決定し、昨年よりも3,000円も下落した」という記事が大きく掲載されていました。この金額では、とても米農家としてはやっていけません。


 ここで問題なのが、どんな米を作ろうが「一律8,500円で買い取り」ということだと思います。私がいつもアドバイスを受けているHさんは土を販売しているのですが、例年10月には、田んぼに良い土を入れるために農家の方たちが土を買いにくるので、とても忙しいそうです。


 ところが今年は、誰も土を買いに来ないといいます。なぜか?それは、これだけ米の買い取り価格が下落してしまっては、土を購入していては採算が合わないし、そもそも良い土を入れて良い米を作ったとしても、そうでない米と買い取り価格が同じで、しかも低く抑えられていたら、高いコストをかけて良い米を作る気にならない、ということなのですね。


 コストをかけずに作った米は、やはり品質は当然落ちるでしょう。そうするとますます米離れが進んでしまいます。悪循環ではないですか。これでは「農家の所得を3倍にする」どころか、多くの農家が稲作から離れてしまい、離農せざるを得なくなってくるでしょう。そして、ごく一部の大規模農家だけに農地が集約されて、大規模経営で成功した人だけが生き残っていけるのです。これではまるで資本主義の論理というか、一般企業の論理に他ならないですね。


 これが日本の農業のあるべき姿なのだろうか。