~範を示すことの難しさ~
川柳番号38 その仕事 私がとった はずですけど
昨日のブログに登場した、私の友人の公認会計士Iさんからメールをいただきました。どうやら「越麻呂日記」を読んでくださったようです。ありがとう。
「社員になったよ!」
と奥さんに大喜びで報告したIさんは、
「えっ!えっ!何それ??今まで社員じゃなかったの」
という思いがけない反応に、きっととまどったことでしょう。そして、監査法人内で社員になるということが、いかに意味のあることであるかを説明したに違いありません。いただいたメールによると、Iさんは、
「社員というのは事務所内で無限連帯責任を負うのだ」
ということを説明したようですが、その時奥さんには、
「どうしてそんなものになってしまったのか・・・」
と言われたそうです。最近でこそ監査法人の社員は有限責任となりましたが、当時は社員は無限連帯責任でした。おもわずメールを見て、笑ってしまいました。
さて、社員というのは事務所内でそれなりに選ばれた人たちですので、職員からは「さすがこの人は社員に選ばれただけのことはある」と思われるような行動をとらなければなりません。一般的な言葉を使ってみれば「範を示す」ということでしょうか。でも、この範を示すというのがなかなか難しいのですね。
私の記憶に間違いなければ、なでしこジャパンの澤選手は、チームのみんなに、「苦しい時があったら、私の背中を見て」と言ったそうです。なるほど、それだけの行動をずっととってきた人でなければ、なかなか言えない言葉です。
組織の中でも、この人はすごいなと思う人が、少ないながらもまれにはいることでしょう。そして、自分もこの人のようになりたいと思って努力するわけです。いわゆる「人の背中を見て育つ」というやつです。
そして、人の背中を見て育った人の背中を見て、また別の人が育っていくのですね。そのような連鎖で育っていった人たちを、私は何人か見てきました。うれしかったです。
私の周りにも、監査法人中央会計事務所東京事務所勤務時代の4年間では、中瀬先生をはじめ、この人はすごいなと思える人たちが何人かいました。また、名古屋第一監査法人在籍中にお会いできたW先生も、そうでした。でもその後は、こんな行動をとってはいけないなという、ある意味反面教師が多かったですけど。
社員となったからには、やはりそれなりの自覚が必要です。思い出したのは、「川柳番号38」です。「その仕事 わたしがとった はずですけど」
例えば、チーム内の他の人(例えば主査)ががんばって準備したおかげでとることができた仕事を、あたかもその成果だけを横取りするかのように、社員が自分がとってきたのだと誇大PRするのは、あまり社員にふさわしい行動とは言えないでしょうね。「あなたのおかげで仕事がとれたよ。よく頑張ったね」とねぎらいの言葉をかけてあげましょう。
また、クライアントをロストするのはほとんど100%社員の責任で、本来であれば監査チームのトップとして「俺が悪かった・・・」と頭(こうべ)を垂れて監査チームのみんなに謝るべきだし、少なくとも「事務所に迷惑をかけた」と責任を感じるのが社員です。間違っても、現場の監査チームの人たちが責任を感じてしまうようなことのないよう、フォローしてあげましょう。「気にするな、君たちのせいじゃない」と。
社員には、これからは選ばれた人だけがなっていくと思います。でも、社員としての真価が問われるのは、社員になってからなのです。