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2013年3月11日月曜日

流木松のギター

~「希望の星と奇跡の一本松」そして「祈り」へ~


 ミュージカル「飛び出す100通りのありがとう」が開催されたのが、震災から1年たった昨年の3月でした。被災地の皆さんが、全国からいただいたさまざまな支援に対して、感謝の思いを込めて演じたミュージカルでした。ドキュメンタリー番組も放映されていたため、ご存知の方も多いと思います。そしてその時に使われたのが、震災で流された後、岸に漂着した松で製作したギターだったのです。


 「漂着松でギターを」というタイトルで、中日新聞夕刊の一面に大きく取り上げられたのは一昨年の11月でした。そして製作するのは、私が敬愛してやまないヤイリギターのゴッド・ハンドこと小池健司さんで、流木松を加工している様子がカラー写真で掲載されていました。私はいてもたってもいられなくなり、その製作現場へと駆けつけたのです。


 津波で流された松はそのままでは死んでしまうけれど、それを楽器でよみがえらそうという発想は素晴らしいですね。ヤイリギターに集められた漂着松からは、ミュージカルで使うギター以外にも、まだ少しギターが作れそうだということでしたので、ケンさんに特別お願いして、その場で私の分の松の木を残しておいていただいたのです。ただ、なにしろ津波の影響で、松は水分をかなり含んでいます。ミュージカルのギターは期限があるため、機械で乾燥させてすぐに製作に取り掛からなければならないけれども、私用のギターは急がないのであれば、しばらく自然乾燥させたほうがいいということでした。


 それから待つこと約1年。いよいよギターの製作開始です。その間、どのようなインレイを入れるか、いろいろ図案を考えていたのですが、松そのものを生かしてできるだけシンプルにしようと考えました。ギターを製作するときにはいつもお願いしている、三重のラリーロビンソンこと加藤穂高さんとも打ち合わせを行い、最終的に決定したのが写真のインレイです。




 奇跡の一本松に希望の星が降り注ぐ様子を描いています。海のブルーは、トルコ石を埋め込みました。松自体がそれほど太い木ではないため、単板では作ることができずツーピースで、ギターとしてもかなり小ぶりです。しかも津波の爪痕というか、塗装する前は腐りもあったようですが、塗装後は木目が大変きれいに出ていますし、温かい感じがします。そしてなにしろ音がいいです。はじくような感じ。最近はこのギターで、ひとり「旅立ちの歌」などを口ずさんでいます。
なお製作過程は、ヤイリギターの公式ブログ「46な日々」に掲載されています。


 震災からもう丸2年が経過しています。この間少しずつではありますが、農作物が取れた、牡蠣の養殖に成功した、新酒ができた等復興の足音が聞こえてきています。その一方で、日々の生活にかこつけて、復興支援といえば寄付をすることしかできない自分がいるわけで、いつももどかしさを感じていました。公認会計士としてではなくて、人として自分も何かお役に立てないものだろうかと。そしてこのギター、被災地の復興のシンボルにと考えています。被災地に持って行って何かできないか…何かいいアイディアがありましたらご連絡ください。


 さて、今後も小池健司さん・加藤穂高さん、そして私の3人のコラボによるギター製作は続きます。次のギターのテーマはShizukaの「祈り」です。




 このギターが出来上がるころには、被災地の復興も急ピッチで進んでいる事を、心から祈っています。

越麻呂より

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