最近、公認会計士業界を題材にした書籍が発売されるようなってきました。書店で平積みになっていたり、売り切れてなかなか手に入らない時もあるようですので、結構読まれているのだと思います。従来から、公認会計士の仕事内容を紹介した本、例えば公認会計士協会が企画した「バー・レモンハート ―公認会計士特別編― 」のようなものは一部ありましたが、監査法人や公認会計士が主役の本格本はほとんどなかったため、仕事に余裕ができたらいろいろ本を書いてみたいなぁと考えていたのですが、先を越されてしまったのだ。
「小説会計監査」の作者、細野康弘さんは、実は、私が会計士試験2次試験に合格して監査法人中央会計事務所(その後中央青山監査法人)に入所した際に、面接を受けた方でした。その後、当時の中瀬監査室に配属されたのですが、細野先生も同じ監査室だったため、よく一緒に仕事をさせていただきました。細野チームの人たちは、今どうしているのでしょうか。
今でも忘れられないのは、新人のころ、受取手形の実査に一人で行ったのですが、終了後、調書をまとめて見ていただいたところ、手続きに不備があるということで、再度会社に行って追加手続きをやり直しさせられたことがありました。私としては、非常に恥ずかしい思いをしたわけですが、仕事に対する厳しさを細野先生に教えていただいた貴重な体験として、その後の自分にとっては大きな財産となった出来事でした。
ここ数年、いろんな会計不祥事が起きて、監査法人内における昔からの古い体質の一掃が言われていますが、勤務時間の長さは別として、仕事に対する厳しさという面では、私にとっては中央会計事務所・中瀬監査室にいた4年間のほうが、今より厳しかったように思われます。ここでの4年間の経験で、公認会計士というのはこういうものだのだという、プロとしての心構えを、いろんなタイプの侍会計士に教えられたような気がするのですね。おかげでその後20数年、公認会計士としてやっていくための土台ができたと思っています。
昭和59年に名古屋に移り住み、地元の監査法人に入所した私には、その後の中央会計事務所に何が起こっていったのかはわかりませんが、「小説会計監査」を読んで、小説とはいえ、なんとなく細野先生のご苦労が伝わってきました。
小説の最後の「昨今ではもう、会計士監査などやってられない」ではなくて「でも、そんなことではならない」ということで、今年も会計士業界のために、微力ながらも頑張っていくのです。