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2014年6月2日月曜日

クライアントの選択

~希薄になる人間関係~


 会計監査人の選任は株主総会で行われます。引き続き同じ会計監査人に会計監査をお願いするところもあれば、総会で新しい会計監査人を選ぶ会社もあるでしょう。そしてしばらくすると会計関係の雑誌に、会計監査人の交代に関する統計資料が登場するのです。どこそこの監査法人は何社獲得して何社ロストし、差し引きどうだったと。毎年の事です


 この、「ロスト」といういい方ですが、これはあくまで監査法人側の立場に立った言い方で、クライアント(この場合監査を受ける立場の会社)にとっては、自社にとってより良いと思われる会計監査人に変更したということです。でもこの「ロスト」という言葉の響き、嫌ですね。


 大手監査法人といっても、以前にも書いたように、設立当初は個人事務所の集合体でしたので、当然それぞれの事務所が持ち寄ったクライアントの監査責任者は、そのまま引き継がれたことでしょう。


 それでも監査法人の成長過程において、クライアントは個人の先生のものではないということで、特定の個人の先生とクライアントとの関係は薄れていきます。監査責任者のローテーション制度もできました。年月がたてば、人は去っていきます。「去る者は日々に疎し」です。そうなれば、当然もうクライアントは個人の先生のものではないし、さらに突き詰めれば、特定の監査法人のものでもありません。


 以前はよほどのことがなければ会計監査人の変更はなかったでしょうし、変更すると会社にとってあまりよろしくない評判がたつため、それを嫌って引き続きお願いするといったケースもあったでしょう。でも最近では会計監査人の変更(監査法人側が嫌う「ロスト)」はそれほど珍しいことではなくなってきたようです。


 クライアントを維持してきた会計士が監査法人を去れば、それに伴ってクライアントも会計監査人を変更するというのは、ごく自然な流れだと思います。


 あらためて、会社との人間関係の重要性を考えさせられます。