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2010年10月4日月曜日

なかなか減らない不正会計

~内部統制監査の効果は~


会計士協会は本部も東海会も新体制になって、このブログも店じまいする日が近いのではないかと思っていたのですが、東海会が昨年8月から今年の8月までの期間でウエブサイトへのアクセス件数の分析を行ってみたところ、この「越麻呂日記」へのアクセス件数がダントツに多かったのだそうです。そうかそうかそういうことだったのか。それではもう少し続けさせていただいてもいいのですね。


内部統制の監査も適用3年目を迎え、監査をするほうもされるほうもなんとなく慣れてきたような気がするのですが、新聞を見ていると、相変わらず不正が後を絶たないようです。アメリカではエンロンワールドコムの不正会計事件、日本でもカネボウ事件ライブドア事件等をきっかけに内部統制の監査が義務付けられるようになったのですが、もともとは会計監査人の監査だけではなくて、不正が起こらないような仕組み(つまり有効な内部統制)を作る側の経営者にも不正防止の役割を担っていただこうという趣旨でこの制度ができたのだと思います。

では、内部統制の監査が始まる前に比べて、導入後は不正会計が大幅に減ったのでしょうか。もう少し期間をとって分析する価値があると思うのですが、表に出てきている不正でも、「内部統制の監査が始まったから発見されたもの」なのか、あるいは「内部統制監査にかかわらず不正というものはおこるもの」なのかにも注目しなければなりません。経営財務を読んでいたら、コストがかかりすぎるため内部統制監査を簡素化(レビューに)するべきだとか、いざ不正会計が発覚してしまったら多大なダメージを受けるため、当然必要なコストとして考えなければならない等、いろんな議論があるようです。資本市場の安定化のためには必要な制度だとは思うのですが、慣れてしまって緊張感がなくなり、形骸化することのないように制度として定着させなければなりません。


もともと不正には、「金品の横領や着服」という面と、「会計不正」に分けられるのですが、前者については公になった場合、金額の多寡にかかわらず不正を働いた人は悪者扱いされ、社会的な制裁を受けることになります。これに対して後者の場合は、不正を働いたということに対して本人に罪悪感が乏しいという特色があるような気がするのですね。なぜかというと、「会社のために仕方がなくやった」という大義名分があるからです。ライブドアの件は別として、一般的に会社が不正会計(粉飾決算)をはたらくケースは、それを行わなければ会社の運営が成り立たなくなるからというケースが多いからです。
例えば、


粉飾をやらなければ上場できない・・・
あるいは債務超過になって上場廃止になってしまう・・・
配当ができなければ株主から経営責任を問われる・・・
入札に参加できない・・・

等々。


結果的に金額も大きくなりがちで、むしろ発覚した場合の影響の大きさからいうと、金品の不正よりはるかに大きくなる傾向があります。


内部統制監査にも限界があり、決して万能薬ではないといわれていますが、この制度が定着したおかげで不正も随分少なくなりましたと、未来の監査論の先生が過去を分析して、結論付けていただきたいものだと考えているのです。