平成11年ごろから会計ビッグバンが始まり、その後減損会計・内部統制監査と、ここ10年くらいの間に会計監査を巡る環境は大きく変化してきました。アメーバ人間の私は、新しい会計基準等が出るたびにすぐに飛びつき、基準が公表される前でも審議会の議事録を読み込んでは情報を収集していたのです。そのおかげでスタートダッシュだけはよく、周りが勉強し始める頃には様々なテーマでの講演を気持ちよく行うことができました。ところがIFRSだけは言葉の壁に悩まされ、なかなか思うように進むことができません。私の場合、言葉の壁とは英語の壁ではなくて、もちろん日本語の壁です。何しろ私は秋田弁と津軽弁、それに名古屋弁と標準語を話し理解することができるのですが、おかしな日本語が出てくると、そこで「突然的脳回路修復不能無気力思考停止症候群」に陥ってしまうのですね。
これではいけないと反省し、多少の翻訳意味不明語には眼をつぶり、お盆休みから急ピッチでIFRSを勉強し始めました。おかげさまで「経済的便益」にはだいぶ慣れてきましたが、でもまだまだです。特に「金融商品」が難しいということでしたので、昨年12月に書かれた雑誌を読んでいたのですが、「期待損失アプローチ」という言葉がでてきて、またしてもはたと立ち往生してしまいました。「期待」というのは「望ましいことが実現することを願う」という意味のはずですが、「損失」という言葉は、いわゆる当事者にとってよろしくないこと、津軽弁で言うと「いくない(いぐね)こと」のはずです。そうすると私の頭の中では、期待損失アプローチというのは、「よろしくないことを願うアプローチ」ということになってしまいます。これはいったいどういうことなのだろうかと、その場でしばらく考え込んでしまうのですね。人格的に問題があるのではないかと。「季刊会計基準第30号」を読んでいたら、「予想損失モデル」に変わっていたので、これならわかるととりあえずは一安心しましたが。
それにしても最近は何とかアプローチというのが大流行りです。
プロスペクティブ・アプローチ |
回廊アプローチ |
発生損失アプローチ |
ルック・スルー・アプローチ |
ダイナミック・アプローチ |
ランニングアプローチ・・・(おっとこれは余計でした) |
そういえば「連結先行」をなぜ「ダイナミック・アプローチ」というのだろうか。片肺飛行でもいいからダイナミックに飛び立とうという意味に受け取れるのですが、たぶん違うのでしょうね。誰か教えてください。
IFRSで重要な、「公正価値」という概念についても考えてみました。例えば、その道のプロからすれば、どこから見ても現代物で千円くらいの価値しかない白磁の壺を、「これは李朝初期です。官窯でしかも蓋付き。12万円です」と言われて、骨董の価値のわからない私が「それではいただきましょう」と購入してしまった場合、この時の公正価値はいくらということになるのでしょうか。
①取引が成立したので12万円が公正価値です。 |
②現代物としての評価額千円が公正価値です。 |
③市場が成立していないため公正価値を測定できません。 |
④その他。 |
いかがですか。
IFRSの講演ができるようになるまでには、まだまだ長い道のりがありそうです。