~君は一体何者?~
「陶説」という雑誌を読んでいたら、青柳恵介さんのエッセイが掲載されていました。
「以前鉅鹿(きょろく)の盃を持っていたが、手放してしまった…手放したことを後悔している」というものでした。
鉅鹿? 知らない…。
青柳さんは、鉅鹿は朝鮮陶磁の本歌だといいます。
鉅鹿を知らずして、朝鮮陶磁は語れない…ということでしょうか。
俄然興味がわいてきました。
傍らにある陶磁器関係の本や雑誌をいろいろ調べて見ましたが、鉅鹿は出てきませんでした。
ならば最後の手段!
陶器関係の広辞苑ともいうべき、「原色陶器大辞典(加藤唐九郎編)」で調べましょう。
頁をめくるのは、十年ぶりくらいになります。
ありました! 鉅鹿。
「鉅鹿の発見は、中国陶磁史を考えるうえでロゼッタ石の発見に相当しよう」
と、結んでいます。
なるほど…そうだったのか。勉強不足でした
原色陶器大辞典によると、鉅鹿と磁州窯とは深い関係にあるようですが、磁州窯で頭に浮かぶ盃がありました。
確か…「緑青」という雑誌に掲載されていたような…
手元にある1991年10月発行の「古美術緑青」No4に、「辻清明コレクション 魯山人旧蔵」の鉅鹿の盃が掲載されていました。
これだ…鉅鹿の盃!
何度も何度も目を通した盃でした…てっきり磁州窯だとばかり思っていました。
君は…鉅鹿だったのか!