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2012年2月29日水曜日

君は計算が得意だから・・・

~職業の選択~




 作家の浅田次郎さんの本に「君はうそつきだから、小説家にでもなればいい」とう本があります。ご自分の過去を振り返ったエッセイなのですが、なかなか面白かったです。「小説家に」ではなくて「小説家にでも」というところがいいですね。それにしても、うそつきと小説家を結びつけるとは。


 学生時代、やんちゃでいたずらで問題児(ご本人の言葉です)だった浅田さんは、先生に微笑みながら言われたことを今でもはっきり覚えているそうです。その後いろいろ紆余曲折があったのですが、小説家になりたいという信念を最後まで貫き通し、遅れはしたもののご自分の夢を実現されました。


 職業を選択するきっかけは、人それぞれいろいろあると思いますし、また様々な偶然が積み重なって、たまたま今の職業にたどり着いたという人も多いと思います。私の父親も戦後の混乱期にいろんな偶然があったようですが、56歳で税理士にたどり着き、今でも現役です。


 私はというと、小学校の2~3年生でしたか、何がきっかけとなったのかは思い出せないのですが、なぜか椅子を作り、それが大人たちに褒められたこともあって、大工さんになりたいと思っていました。結局は大工さんから公認会計士に進路変更することになったのですが、その間にも、歌手になりたい、歌を作りたい、シンガーソングライターになりたい、会計士試験に通った後も、小椋桂のように二足のわらじを履いてみたいと思って、必死に歌を作っていました。公認会計士を選んだのは、決して「君は計算が得意だから公認会計士にでもなりなさい」といわれたわけではありません。


 ゴルフをラウンドしていて、例えば落としどころが限られているようなトリッキーなホールで、たまたま理想通りのいいショットが打てたりすると、「さすが会計士、計算通りですね」などとひやかされることがあるのですが、計算が得意→計算高いと連想してしまい、あまりいい気もちはしません。そもそも私は計算があまり得意ではないので。ましてやゴルフはつくづく計算のできないスポーツだと思います。無心でプレイしているときはいいのですが、なんとなく調子が良くてスコアカードを見てみたら、残り2ホールをボギーペースで30台などと気が付いてしまうと、たいてい次のホールでOBを打ってしまいます。不思議なものですね。ましてや人生においては計算などできるはずもありません。


 私の身近にいる怪しい税理士は、父親に「おじいさんの後をついで、自衛隊に行きなさい」といわれたようです。そこから一大発奮し、学生時代に税理士試験の簿記・財表合格、翌年税法3科目一発合格という離れ業を演じました。何がきっかけになるかはわかりませんね。


 NHKドラマ「監査法人」では第2話で、公認会計士の健司が飛鳥屋の裏帳簿を暴こうと不動産屋を回ります。そして、土地の大幅な時価下落の実態をつかみ、鈴本公認会計士にその事実を突きつけるのですが、そこで健司は鈴本公認会計士にきつい一言をかけられます。

「不動産屋にでもおなりなさい」と。

もちろん健司は不動産屋にはなりませんでしたが。