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2025年3月14日金曜日

SOLD

 ~売れてしまった鉅鹿の盃~


 いろいろ調べたり連絡をとってみると、鉅鹿の出土品で盃に使えそうな作品が、東京都内の古美術店のところにあるのがわかりました。


 何しろ大河の氾濫で土砂に埋もれ、800年ほどたってから出土したものです。


 土銹まみれだと使えないし、美しくなければ飾っておくこともできません。

 ここはやはり実際の作品を見て確認しておく必要があるでしょう。


 すぐにでも東京に行きたいところでしたが、仕事がまだ終わっていなかったので、一段落するまで我慢我慢。


 県から依頼されていた業務に関する報告書が印刷に回り、ようやく仕事にめどがついたので、古美術店に連絡して見ました。


 「鉅鹿まだありますか?」


 「ああ…鉅鹿ね。

 先日お客様がお見えになって、買っていってしまいましたよ!」


 「なっ!…なんですと!」


 …あり得ない…。

 私の鉅鹿への想いが届かなかったとでもいうのでしょうか…


 古美術商は言います。


 「そのお方はとても研究熱心な方でしてね、なんでも…突然鉅鹿のことが気になりはじめたそうですよ」


 「あんな発掘品のどこがいいんですかっ! 

 今すぐ取り戻してくだニャンコ」


 普段冷静な私も、珍しく逆上してしまいます。


 「そういわれてもねぁ…そこまで言うなら…

 あなた様が購入金額に少し上乗せして、そのお方から買い取られたらいかがでしょうか」


 「いったいどこのだれなんですか…

 その鉅鹿の盃を買った人というのは! ハァハァ」


 「北のほうから来たといっていましたよ。 名前は…なんとかまろ…

 確か…越麻呂とか言っていましたがね…」


 えっ!