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2014年6月27日金曜日

社員

~川柳番号13 
 
 社員とは 何のことかと 妻が言い~

 6月というのは、我々公認会計士業界の人間、特に監査法人に在籍している人にとっては、ある面区切りの月です。そして、7月以降の新年度を迎えるにあたって、昇格人事や担当替えがあり、一番そわそわする時期でもあります。落ち着かない人も多いと思います。


 公認会計士試験に合格者した人の中には、「サラリーマン生活を送るつもりだったのだが、たまたまその就職先が監査法人だった」という人も、ごくごく稀にはいるかもしれませんが、そんなにめったにいるわけはありません。


 やはり公認会計士を名乗るからには、たとえ監査法人に就職したからといってもサラリーマンではなく、会計のスペシャリストとして、個々人が志・プロ意識を高く持って日々過ごしているはずです。私の仲間たちは、みんなそうでした。


 監査法人の中で活躍するためには、以前はやはり「社員」になるというのが、一つの通過点として乗り越えなければならないハードルでした。でも今は、だんだんそうではなくなってきているし、これからはむしろ社員になれない人のほうが多くなってくるでしょう。


 この「社員」という言葉・意味合いは、実は監査法人というある面閉ざされた狭い世界でしか、その重みがわからない言葉なのです。一般的に「社員」といったら、通常の会社の「従業員」という意味ですが、監査法人内の「社員」というのは、会社法上の「出資者」で、早い話が「監査報告書に署名できる人」です。会社の役職に例えると、人数からいったら「係長」か「課長補佐」くらいにあたると思いますが、監査法人内で社員になるならないでは大違いです。


 6年ほど前に、「NHKドラマ 監査法人」の製作にかなり深くかかわりました。その際に、監査法人内でしか通用しない業界用語を、一般の視聴者にどのように伝えるかというので、いろんな局面で苦労したのですが、「社員」という言葉のもその一つでした。そして結局、社員という言葉は使いませんでした。


 私の友人である公認会計士のIさんは、社員に昇格したときに、奥さんに「社員になったよ」と、大喜びで伝えたらしいのですが、奥さんは「えっ!えっ!何それ??、今まで社員でなかったの」とびっくりされたそうです。その時の川柳が「社員とは 何のことかと 妻が言い」なのです。


 さて、この「社員」ですが、私がこの業界に入ったころは、監査法人に在籍していれば、だいたいクリアすることができました。私の「監査法人中央会計事務所 東京事務所」の同期は13人いましたが、そのうち11人は5~6年以内に独立を果たし、私を含めて残った二人は30歳代で「社員」になっています。ただこのときの、今の試験でいうところの公認会計士試験合格者は、250人くらいでしたが。


 いまは、試験合格者の数が、そのころに比べると大幅に増え、ここ1~2年は落ち着いたといっても、ピーク時には3,024人を数えています。でも、監査法人のクライアント数の増加は、試験合格者の増加割合からするとはるかに少ないはずです。


 大手監査法人は、一時400人ほど採用していますし、最近でも200人くらいは採用しているでしょうか。でも、多く採用したから多く社員になることができるというのは誤りで、残念ながら毎年枠は限られているのです。社員登用までのスピード感にはそれぞれ個人差はありますが、だいたい20人に1人~2人くらいでしょうか。


 もちろん枠があるのは「社員」だけではありません。主査になれない人もこれからはたくさん出てくるでしょう。事務所内での自分の立ち位置を常に把握していないと、後になってから後悔することになります。


 優秀で、志の高い人が昇格していけるような、納得感のある人事が行われればいいのですが、人事というのはいろいろ思惑の絡むものですので、なかなかその通りにはならないものです。


 人事にあまり振り回されないで、今自分がやるべきことを、しっかりやりましょう。