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2009年8月20日木曜日

受験生にお盆休みはないのです

~就職活動の思ひ出~


監査法人に勤務する皆さんは、四半期決算の監査も一段落し、お盆休みでつかの間の休息を楽しんでいることと思いますが、公認会計士試験の受験生にとってはお盆休みなど関係なく、特に論文式試験の受験生はいよいよ最後の追い込み時期を迎えることになります。体調管理には気をつけていただいて、万全の態勢で臨んでいただきたいものです。


私の場合は、今をさかのぼること約30年前、公認会計士試験2次試験(当時は2次試験が最難関でした)を初めて受験したのですが、合格しているような失敗したような微妙な状況で合格発表を待つことになったのでした。大学4年生で、試験終了後がちょうど夏休みだったため、当時実家があった青森市に帰ってなんとなく落ち着かない日々をぶらぶらしながら過ごしていたのですね。私の場合、大学時代に音楽やアルバイトをやっていたこともあり、1年間留年し、しかも就職するつもりもなかったため、今でいうところの「就活」もまったくやっていませんでした。すると親父に言われたのです。「いつまで居候するつもりだ」と。結局1回目は失敗に終わったのですが、2回目は背水の陣で臨み、なんとか合格することができました。


公認会計士試験2次試験に合格して、会計士補になったとしても、いきなり独立して開業するのは無理というものです。したがって、とりあえず実務を覚えるため、監査法人か会計事務所に就職することになります。今は公認会計士論文試験受験後、すぐに就職活動ということになっていますが、当時は合格後に面接が行われていました。合格したといっても、監査法人なるものがどのようなものであるのかよくわからなかったのですが、大部分の会計士補が監査法人に就職していたため、自分もとりあえずそうするしかないのだろうということで、受験仲間と監査法人めぐりを始めたのです。面接を受けたのは、外資系1、中規模法人1、大手法人2の合計4法人でした。


☆以下、私小説



東京での満員電車がいやで、しかも普通のサラリーマン、普通の会社人間には絶対になりたくないと考えていたため、大学時代も就職活動というものは全くやったことはなく、当然面接などというものも経験がありませんでした。

私は学生時代、グループを組んで多少音楽をやっていたこともあり、肩までかかるようなロングヘアーでした。面接を受けるからには当然髪の毛を短くしなければいけないのだと心に決め、バンバン「いちご白書をもう一度」という歌にもあるように、もう若くないさと言い訳して、清水の舞台から飛び降りるつもりで、思い切って髪を切った(つもり)のです。

面接当日、某中規模監査法人へ、スーツを恥ずかしいほどばっちりときめて(これもつもり)お伺いし、代表社員といわれるご年配の先生の面接を受けたのでした。顔を見合せて軽く会釈をし、とりあえず自分の名を名乗ったところ、いきなり面接官から「君の髪は長すぎるではないか」と先制パンチが飛んできたのでした。そして息もつかせぬまま立て続けに「これからは社会人になるのだから、他人に不快感を与えるような髪形はやめて短くし、身だしなみをきちんとしなければいかんのじゃないかね、エー君!」とワンツーパンチを浴びせかけてくるではありませんか。私はいきなりそのようなことを言われて驚いてしまい、その場を無言で退席しようかとも思ったのですが、そんなことをしたらとりあえずこの業界では食べていけなくなるのだろうなと冷静に考え直し、「ごもっともでございます」と心の中で呟いていたのでした。

その後、2法人ほど法人説明会に顔を出したのですが、なんとなくすっきりしません。ある法人の面接でのことです。そこには親しみやすそうな、そして愛嬌のある顔をした2名の先生と、まじめを絵にかいたような2名の先生の、両極端の4人の面接官がいました。一通り事務所の説明が終わった後、いよいよ質問が来る番です。私は一瞬身構え、予想される質問の模範解答を大事にしまっていたのですが、最初に来た質問は「ところで君は、酒は飲めるのかね」でした。私は「えっ????」と一瞬目が点になってしまったのはいうまでもありません。秋田生まれで酒量には自信があった私でしたが、酒量が多いことがはたして採用されるにあたって有利なのか不利なのか、とっさには判断できませんでした。とりあえず「ええ・・・人並みには・・・」と答えると、その面接官は満足そうにうなずいたのでした。そしてさらに追い討ちをかけるように、「じゃぁ歌はどうだ?」と質問してくるではありませんか。私が「えぇ、学生時代はギターを弾きながら歌を歌っていました」と答えると、ますます嬉しそうな顔をしながら「そうかそうか」とうなずいています。そうするうちに、隣の面接官が「君はこっちのほうはどうなんだ?」と、両手で麻雀の牌を倒すようなしぐさをしながら、不安そうに質問してきたのです。「えぇ、大学時代はよく雀荘に通ってましたけど」と答えると、その面接官の目がキラリと光るのを、私は見逃しませんでした。彼は、新しいお友達でも見つけたように、「フンフン」と楽しそうに笑っていたのでした。

面接ではいろいろありましたが、結局は大手監査法人に就職を決めました。決め手はクライアントです。当時はいくつかの監査室に分かれていたのですが、面接の際に、日本公認会計士協会の会長も務められたことのある「中瀬宏道先生の監査室に入れてください」と頼んだのです。そこには日本を代表するようなクライアントがたくさんありました。自分がそのような会社の監査を担当することができるなどというのは夢のような話です。今考えると怖いもの知らずというか、新人の分際でずいぶん思い切ったことをお願いしたものだと思うのですが、入所したら希望通り中瀬監査室に配属になりました。





30年前の私の就職活動の懐かし思い出話ですが、今思えば最後の古き時代だったのでしょうね。私も法人のリクルート活動や面接官を何年かやりましたが、監査法人の財産は人材そのものですし、採用される側も人生の大きな岐路ですので、今は採用するほうも面接を受けるほうも真剣勝負です。私の場合、最終的にはクライアントの充実度はもちろん、事務所の雰囲気、先輩のアドバイス、受験仲間の情報等を参考にして、ここなら大いにやりがいがあるのではないかということで決めました。初任給が高いとか待遇面には全く興味がなく、おもしろい仕事ができそうだな、日本経済に貢献できそうだなというのが決め手です。


受験生の皆さんも、試験が終わるとすぐに法人説明会があり、監査法人めぐりが始まると思います。目先のことに惑わされず、自分が公認会計士としてどんな仕事をしたいのか、将来どんな公認会計士になりたいのか、どんな雰囲気の事務所(厳しそうだとか自由な雰囲気があるとかアットホーム的だとか)で仕事をしたいのかというイメージをある程度持って面接を受けたほうが、自分にふさわしい職場を選ぶことにつながるのではないかと思います。


頑張ってください。