カテゴリリンク

2008年8月12日火曜日

NHKドラマ「監査法人」Q&Aシリーズその5

Q.5健司も茜も監査法人を退職してしまいましたが、監査法人というのは退職者が多いところなのですか、また、いったん退職して同じ法人に戻ることはあるのでしょうか?


Ans
��.監査法人は競争が厳しく、仕事も大変なため、入社3年で半分は辞めます。
��.そんなことはありません。ほとんどみなさん定年まで勤務します。
��.入社3年間ほど経験を積んで力をつけてから、新しい世界へ挑戦するために退職する人もちらほら出てきます。



 人生におけるサラリーマン生活で、退職届を出すという場面に直面するのは、最近では珍しいことではなくなってきているのかもしれませんが、かつての日本においては、正しく由緒あるサラリーマン生活を営んでいる限り、通常は1回というのが相場でした。しかも、その時期は、定年になったため等の理由で、人生の終盤を迎えるあたり、というのが平均的な生き方だったと思います。それが最近では、「入社3年で何割が退職する」などといわれるようになり、成果主義が原因かどうかはわかりませんが、会社に対する愛着や忠誠心もうすれ、転職を繰り返す人も増えてきているようですね。
私の場合、今はなき某監査法人の東京事務所へ入所したのですが、入所4年目にして、早くも1回目の退職届を出さなければならない場面に直面してしまったのです。その理由は、会社の粉飾を見抜けなかったからでも、クライアントと問題を起こしたからでもありませんし、はたまた同僚と喧嘩をしたからでもありません。ヘッドハンティングされてしまったのだ~!などという理由であれば、なかなかかっこいいいのでありますが、結婚して名古屋に来ることになっただけの話なのです。


 以前は、公認会計士になって力をつけて、独立する人が結構多く、私の二次試験の同期も十数人いるのですが、いまだに監査法人に勤務しているのは、私と協会本部の市村常務理事の二人だけになってしまいました。しかも、ほとんどがすぐに独立し、もう20年くらい二人だけという状況です。最近はなかなか独立するのが難しくなってきたのですが、仕事に多様性が出てきたため、別の世界で活躍する人も増えてきました。それでも監査法人を退職する人は、以前に比べたら大分減ってきたような気がします。
 私の場合、退職届を出したのが29歳の時で、東京という刺激的な都会に住んでいることが楽しくて仕方がなかったころだったため、退職届はなかなか渡せませんでした。他の人の退職届を参考に、震える手で何回も書き直して、やっとの思いで書き上げたのですが、「これを渡したら、もうこの事務所にいることは出来なくなるのだぞ、この東京を離れることになってしまうのだぞ」と思うと、なかなか渡せませんでした。今日こそ渡してしまおうと、代表社員の先生のそばまで行くのですが、また戻ってきてしまったり、言い出そうと思っても口が動かなかったりで、やはり自分はこの事務所に愛着があるのだなぁと、しみじみ思ってしまいました。そして、とうとう震える声で言ってしまったのです。   「オレ、名古屋へ行きます!」


 今は、退職届を受け取る立場になったのですが、みんな思い悩んでの末に私のところに持ってきているのだなぁと思うと、複雑な心境になります。出来れば監査法人に残ってほしいのはやまやまなのですが、公認会計士になるといろんな可能性が開けているため、新しい仕事にぜひチャレンジしてほしいという気持ちもあります。どちらが正解なのかは誰にもわからないし、一回しかない自分の人生なので、好きなように生きるのが一番いいのだ。


 茜さんは、いったんやめた事務所に再び戻ったのですが、一般的にこのようなことはあるのでしょうか。実は何を隠そう、私がそうなのです。名古屋へ来た後、地元の監査法人に入ったのですが、なんとなく失望してしまった私は、当時の渡辺先生に、いったん退職してパートになる旨をお伝えしたのです。独立するつもりでした。ところが、数ヶ月もしないうちに、大手監査法人との合併話が現実化し、自分の活躍する場があるのではないかと考え直し、恥を忍んで、常勤勤務に復活させていただきたいとお願いしたのです。心の広い渡辺先生は、「ああ、いいよ」の一言で、受け入れてくれたのでした。
東京で入所した事務所は、今はもうありません。長い人生、どこで何があるかわからないのだ。


 ドラマの方は、健司もなんとなく近い将来、「エスペランサ監査法人」に復帰するニュアンスで終わっていましたが、続編があるのでしょうか。期待しましょう。