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2008年8月16日土曜日

簿記を発明した人は偉い

~世界の大発明とゲーテは言う~


NHKドラマ「監査法人」Q&Aシリーズその8


Q.8バランスシートといわれて何を思い出しますか


Ans
��. バランスシートとくれば貸借対照表に決まってるがね。
��. 私なら簿記の基本原則「貸借平均の原理」ですね。
��. 表裏一体、借金も財産のうち・・・かな。
��. シートノックで、なかなか倒れない人のことでしょ。



 NHKの渡辺さんと、事務所で台本の打ち合わせをしているときに、台本の中で篠原理事長と健司がバーで会話するシーンが出てくるのですが、「人生はバランスシートのようなもの」という意味の会話が、最初の方の(第一稿か?)台本に書かれていたのですね。このあたりは会計のシーンとはまったく関係ないため、私の出番ではないのですが、私ももうすでに50年くらい生きているので、何か味のあるセリフでも考えてみようと思い、篠原理事長に「人生はたとえて言えばバランスシートのようなもの、いわば簿記で言うところの“貸借平均の原理”で、長い人生どこかでバランスが取れるものだよ。つらいときもあればうれしいこともある。無駄なことをやっているように思われても、いつか役に立つことだってあるし・・・」などと考えていたのですが、作家の方が理事長に言わせると「・・・・表裏一体、借金も財産のうち・・・」という事になるのですね。会計士がバランスシートというと、すぐ「貸借平均の原理」を思い出すのですが、さすが作家の方はいうことが違うというか、台本を読んでいると、「う~ん、なるほど。奥が深い」と思ってしまいます。
 このシーン以外にも、さすが作家の方は違うなと思えるようなセリフが、第6話にまでわたって数多く出てきており、このドラマに素晴らしい作家の方を選んでいただいて、私としても大変感謝しております。このあたりは、私にはまだまねのできないところでもあり、修行が足りないのだと思います。永平寺に行って修行してこようかな。でも、私は作家を目指しているわけではないから、これでいいのだ。そういえば確か「本気で作家になる方法」などという本が書店に出ていたような気がしましたが、こっそり読んでみようかな。


 ところで、世界の三大発明は何かと聞かれた時、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?ケータイやパソコンも確かに便利ではありますが、やはり力不足です。長い歴史を考えると、言葉・文字・紙・電気などが思い浮かびます。特に「世界の初めに言葉ありき」と旧約聖書で断言しているだけに、言葉は確かに世界の大発明といえるかもしれません。ところで簿記もかなり上位に食い込むのではないでしょうか?皆さんご存知のゲーテは、その著書の中で「複式簿記が商人に与えてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が生んだ最高の発明のひとつだね」(岩波文庫より)と、登場人物に語らせているくらいです。
 簿記というと地味な印象を持つ方が多いようですが、簿記の考え方は言葉の壁を越えて世界共通の考え方となっています。企業があるところには必ず会計があり、そこで帳簿記録を行うことは必要不可欠となっています。また、企業だけでなく、町の小さな個人商店でも同様です。日々の取引において、一体何にお金を使ったかは気になるところですし、誰にどれだけの債権があるのかも記録しておかないと、後で損失をこうむることになりかねません。
 実際に帳簿記録が行われるようになったのは、やはり商取引が盛んになった頃ですが、現存する最古の帳簿記録は、イタリア・フローレンスの公文書で発見されたもので、フローレンスの銀行における1211年の日付が付されているものです。それ以来現在まで、会計はどんどん複雑になっているのです。
 簿記は帳簿記入の略語と言われていますが、英語で言うと「Book Keeping」です。そして日本にはじめて西洋式簿記を紹介したのが、一万円札でおなじみの福沢諭吉であるといわれています。
 資本主義を支えているのが株式会社制度で、株式会社は例外なく決算を行わなければなりません。決算書をどうやって作成するかというと、それは会計や簿記の世界です。ですから、簿記は地味な言葉ではありますが、大げさに言えば、資本主義を支えているといっても過言ではないのです。変な理屈かもしれませんが、それだけ簿記は大事な技術だということができると思います。


 たまにはまじめなことも書くのだ。